VPSの1コアあたり性能に注意
さくらのVPS、AWSなど様々なサービスのVM、VPSなどのスペックを見る上で重要なCPUコア数。しかし同じ1コアといっても性能に10倍近い差が存在する場合があることをご存知だろうか。
今回はいくつかのサービスのVMのCPU性能を紹介するので、よければVPS選びなどの際に参考にしてほしい。
なお、価格を見る際はGCPのプリエンプティブ料金、EC2のスポットインスタンスなどは考えず、月額利用料金を見る。また、以下単純にスコアと書いた場合Unixbenchスコアのことを指す。
大手クラウドプラットフォーム
比較的高価なインスタンスの場合には仮想1コア=Xeonの1スレッド相当ではあるが、低価格帯ではかなり特殊な仕様で、場合によってはPentiumⅢ(スコア200弱)のほうが性能的にはマシという場合も存在する。
Google Cloud Platform
GCPの共有コアマシンタイプのCEは月約3.9ドルから。

しかし、3.9ドルのf1-microはUnixbenchスコアではPentiumⅢと同程度(スコア200前後)であるなど、CPU性能は現行の仮想マシンとしては本当に最低限である(下のリンク参照)。
また、ハイCPUマシンタイプでも2コアで月36ドルからである。こちらは1コアあたり性能は現行のXeon1スレッド相当(スコア1500前後)は出るものの、さくらのVPSで2コアのVPSが月1000円前後で借りられることを考えると、単純にVPSとして扱う場合には割高である。
余談ではあるが、GCPのCPU共有マシンタイプのバーストの仕様はわかりにくい。説明では
f1-micro マシンタイプでは、バースト機能が提供されます。この機能を使用すると、インスタンスが追加の物理 CPU を短時間使用できるようになります。バーストは、インスタンスが元の割り当て数よりも多くの物理 CPU を必要とした場合に、自動的に発生します。このような急激な需要の期間中、インスタンスは物理 CPU が利用可能になる瞬間を捉えて、突発的に活用します。
とあるものの、AWSのバーストのように高性能を出す手段が不明である。
AWS
低価格帯のインスタンス(T2, T3系)はCPUの割当がクレジット制である。最も安いt3.nanoで月3.7ドル前後から。こちらは短時間であればXeon2スレッド分のフル性能(1コアあたりスコア1900)を出せる点は魅力的。CPUクレジットは144まで蓄積可能とのことで、クレジットが最大まで溜まっている場合、2コアを72分間フル稼働させることができる(クレジット0から再度最大まで溜めるには最短24時間必要)。一方長時間CPUリソースを使用する場合については、前世代t2.nanoに至ってはPentiumⅢどころかPentiumⅡに近いといったようなスコア(スコア100前後)になってしまう。

一方、T2, T3インスタンスを除けばコア数と同じXeonのスレッド数を使用するのと同じ性能が出る。
余談ではあるが、AWSにはVPSとして使用できるLightsailが存在するものの、CPUの割当は低価格帯EC2インスタンスと同じクレジット制である模様。常時CPUリソースを使用する場合にはEC2と同じく非常に低速となる。

国内のVPS・クラウドプラットフォーム
おおむね仮想1コア=Xeonの1スレッド相当。極端に低いものは少ない。
IDCFクラウド
500円から使える(実際は300円程度でも運用可能)仮想マシンが用意されているが、CPU性能に関しては1コアと書かれているものの、実質1/4スレッド分程度の性能(スコア400弱)しかない。

それより上のインスタンスは価格が跳ね上がり最低でも1500円となるが、おそらくこちらはCPU性能も跳ね上がり通常のXeon1スレッド分程度の性能(スコア1500前後)はあると考えられる。
さくらのVPS・クラウド
こちらは綺麗に仮想1コア=Xeon1スレッド相当(スコア1500前後)となっている。VPSに関して言えば、価格は決して激安という部類には入らないが、コストパフォーマンスはかなり高いと言えるだろう。
他にも国内には様々なサービスがあるものの、さくらと同じく素直な性能が出るものが多い。
海外のVPS
激安のものについてはカオス。業者によっては月150円のVPSが国内の3コアVPSより性能が高いこともあれば、5コアで0.4コア相当であったりする。しかも同じサービスでもノードによって当たり外れまであることも。
選ぶ際はネット上のレビューなどを参考にしたほうがよいだろう。
VMhaus
VPSのプランとノード次第ではあるが、場合によっては1コアでスコア2500を叩き出す。これは4Ghz近いXeonを使用しているためである。しかしより新しいノードではEpycを使用していることがあり、こちらは大きくスコアが下がりスコア1300程度となってしまう。
Alpharacks
コア数表記のないサーバーについては、実際には1コアで性能はスコア400未満という程度。コア数表記のあるものについては800程度。
Digital Ocean, Linodeなど
1仮想コアでスコア1300ほど。ほぼXeon1スレッド分。
まとめ
大雑把ではあるが、1コアあたりの性能は以下の表が目安となるだろう。
スコア | |
大手の一般的なVM | 1500-1900 |
4Ghz近いXeonを使用するVM | 2500前後 |
やや古いCPUを使用するVM | 1000前後 |
激安VM | 300-700 |
コア数表記のないVM | 300台 |
クラウド最低価格帯VM | 100~ |
参考:Core i7 (4コア8スレッドで) | 4500前後 |
参考:Raspberry pi3 | 300前後 |
参考:Pentium(無印) | 20 |
参考:PentiumⅡ | 30~ |
参考:PentiumⅢ | 最大で200前後 |
お悔やみ欄(先月)
サーバー博士
なぜか滋賀に本拠地のあったホスティングサービス。規模としては小さいながらも400円前後からというリーズナブルな価格の共用サーバーを販売していた。
サービス終了の経緯は不明。Twitterアカウントは残っているものの、公式サイトはIPアドレスが見つからない状態となったため、サービスは終了したとみられる。
Dedicenter / Cloudflexy
昨年1月から問題が発生し、8月ごろには一時公式サイトのSSL証明書有効期限が切れ、サイトも非常に不安定になるなどしていたホスティングサービス。その時点でPaypalが決済を凍結しており、Bitcoin支払いのみ受け付ける状態であった。また、運営からは「サイトが重いのは皆さまから好評をいただき大量にアクセスをいただいているからです。チケットにはすべて回答しますので焦らずお待ちください」との発表が出ていたが絶対ウソだ。
CPU8コアメモリ8GBのサーバーが月8ドル程度などかなりの格安サービスであった。
サービス終了の原因はおそらく資金繰り悪化などと考えられる。
IDCFクラウド(個人向け)
国内大手クラウドプラットフォームのIDCFクラウドが個人向けのサービスを一部終了すると発表した。
仮想サーバ、RDB、ストレージ、LBなど主要なものは個人向け提供が終了し、残るのはベアメタルサーバとビッグデータ関連サービスのみとなる。なお法人向けについては変更はない。
最低で月500円から使用できるインスタンスが有名であった。
とりあえずレンタルサーバー
転送量が数TB/日など謎スペック共用サーバ、VPS、専用サーバーを販売していた。
なお、代表者が同じサービスの「わいにじ」や「伴太」はサービス継続中である。
お悔やみ欄(2018年総合)
Yahooジオシティーズ
2019年3月末をもってサービスを終了すると発表。1997年よりサービスが始まっており、古いものから新しいものまでありとあらゆるサイトが存在している。貴重な情報が失われることが懸念されている。
@YMC, ServerQueen
どちらもGMOグループのサービス。GMOグループは様々なサービスを次々買収した結果、同じようなホスティングサービスが重複している状態であり、統合を図ったものとみられる。
しかし今でもVPSではheteml、Conoha、GMOクラウドVPS、お名前ドットコムVPS、Webkeepersなど多数のサービスが存在し、今後も統合が進む可能性がある。
お誕生欄
Conoha Wing
高速な共用サーバー。最近流行のLitespeedではなくNginxベースのシステム。
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