条件
日本が時空転移したらどんなPC・サーバーが製造されるか妄想してみた。
- 列島大戦NEOジャパン的な世界を想定
- 日本は全領土が別時代もしくは別次元へ転移
- 資源は不足せず、インフラはすべて維持される
- 他国は存在しない
という条件でどんなPCが作れるか考えてみた。
(部品レベルで海外から輸入してるものは多いのでいずれにせよ非現実的ではあるのだが)
CPU、チップセット
x86系CPU
IntelやAMDのCPUはもちろん国内で作れるわけがない。設計図も、作れるファブも国内に存在しない。
一応x86_64系CPUとしては、VIA Nanoは富士通四日市工場で作られていたという話があるので、なんとかVIA Nanoレベルのものは新造して使えるかもしれない(ライセンスはこの際無視するものとする)。ついでにチップセットやらもここで作っていただろうと非常に楽観的な見方をすればだが。
性能としては、同クロックで初期のAtomよりマシ程度の2.0GHz 4コアくらいだが、もともと省電力に振っているので、無理すれば2GHz代中盤は出てくれると考えて…それでもCore2Quadに数段劣るレベルのものが精一杯だろう。改良しようにも国内で設計したものではないのでマスクデータ以上の情報はなく、改良の余地はないだろう。このことから、広く普及することはないと思われる。
幸い、CPUは寿命200年といわれるほど長持ちするので、中古品を使いまわすことでx86系CPUがすぐに不足することはないだろう。
ARM系CPU
ARM系CPUは国内でもライセンス生産している企業があり、問題なく製造できる。ライセンス生産とはいってもカスタマイズされたものが生産されており、国内でも発展させる余地があるだろう。
その他国産CPU
国内企業製CPUとしては、富士通SPARC、日立Super-H、NEC SXがある。Super-Hに関してはそのままではクライアントPC用として使うには性能は厳しいだろう。他2つはサーバー用、科学技術演算用向きだが、どれも自社完結で完成品まで組み上げる技術はあるので、ARM系と並んで発展の余地は大きい。
その他
オープンソースアーキテクチャというものも存在するが、時空移転で国内が混乱しており上記のようなCPUがある中で1から発展させる余裕はあまりないだろう。まだ世界でもベンチャーが製品を出すか出さないかというレベルなので。
ただし、Super-H系のJ Coreについては国内に余裕が出てきたら
予想
ひとまずはPCに関してはx86やx86_64系CPUがひたすら使いまわされるだろう。
モバイル機器に関してはどんどんARM系CPUのシェアが伸びると予想される。
サーバーもXeonなどの使いまわしとなるが、保守を考えるとSPARCが多少シェアを伸ばす可能性がある。
その後、次第にARMがクライアント用やサーバー用でもシェアを伸ばしていくと思われる。富士通が次期スーパーコンピューターをSPARCではなくARMベースにしたことからも科学技術演算向けでも使えるので、長期的にはARMが天下を取っていく可能性が高いと思われる。
1コア当たりの性能でSPARCやSXが勝っているとはいえ、わざわざクライアントPC用SPARCを製造し、オフィスソフトも新しく作り・・・は難しく、すでに一般向けLinuxが普及しているARMがクライアント向けに普及する可能性のほうが高いと思われる。
とはいえ、外国製CPUというライバルが消えた状況で官公庁はSPARC系メインフレームをわざわざ別のもので置き換えようとはしないだろうし、ARM天下でもSPARCは生き延びるだろう。
また、NEC SXはGPUやXeonという強大なライバルがいなくなることで、多少引き合いが増えるかもしれない。それでもすでに普及したARMでも富岳のようなシステムが作れることから、再びスパコンの主流となるような未来は難しいだろう。
メモリ
国内でMicronジャパン(旧エルピーダ)が産業向けには生産しているので、特に問題はないだろう。HBMやGDDR系まで作ってくれるのかは分からないけど。
またMicronジャパンの国内工場は研究開発拠点でもあるらしく、今後の発展も見込める。センチュリーマイクロなどモジュールメーカーも国内にあるので、メモリに関しては問題は少ないだろう。
ストレージ
HDD
国内HDDメーカーといえば東芝がある。東芝のHDDはフィリピン、中国などで生産されているが、HDDのプラッタ(の生産設備?)については昭和電工が国内で製造している。また研究開発拠点も国内にある。
このことから、時間はかかるが頑張れば国内での生産もできると思われる。
また忘れてはならないのがWDと旧HGSTの国内拠点で、研究開発拠点が国内に存在する。
SSD
東芝、Sandisk&WDの生産拠点、開発拠点が国内に存在し、フラッシュメモリのBGAパッケージの生産までは問題ないだろう。
NANDフラッシュ(BGAパッケージ)、DRAM、コントローラーがあればはんだ付けくらいは何とかなるだろうが、問題はコントローラーである。
- 研究開発拠点があるので何とかしてくれる
- 過去にシグリードが国産SSDコントローラーを製造したので頑張る
ので、まあ何とかなると信じたい。しかし短期的にはコントローラーがなくて生産できないという可能性も考えられる。
まとめ
短期的には生産できない事態も考えられるが、それほど時間はかからずに安定供給は見込めるだろう。
気になるのがSandisk&WDの国内拠点で、当然本社などの機能を持たない。
時空移転で緊急状態で統制経済にするという場合には、WD&Sandisk、および旧HGSTの拠点を東芝が吸収することになるだろう。この場合、東芝は国内でストレージ産業を独占する企業となる。
独占を防ぎたいという場合には、日立↔旧HGST↔WDのよしみで日立あたりが買収するのがスムーズだと思う。しかし孫正義あたりの金持ち実業家が東芝以外の陣営をすべて買収・・・というのもあり得る未来だと思う。こうして日立と東芝、もしくは東芝となにか(ソフトバンクなど)の2大ストレージメーカーが並ぶ未来が予想される。
GPU
一番の難題。Nvidia、AMDのGPUの生産設備は国内になく、設計ノウハウもない。VIA Chromeはもし国内にマスクデータが残っていれば生産できるかもしれないがそんなものでどうしろと。
そこで輝く(?)のがゲームハードメーカー。最近のゲーム用GPUはほぼNvidiaかAMD製だが、ドリームキャストやPS2までさかのぼればほぼ国産のGPUが存在する。
ひとまずはGPUは中古品が使いまわされるだろう。国産のGPUは2000年頃の技術からなんとか発展させるしかなく、道のりは厳しいだろう。
OS
Windowsはひとまずは動き続けるだろう。なんだかんだでサポートがなくなろうが10年は使えるかもしれない。
それ以降となると国産OS(Tronファミリー、Asianux、Vinelinux)に期待がかかるが、現状シェアも使える人も多いDebianやUbuntu、CentOSを使ったほうが楽だろう。というわけで、国内で自由にいじれるOSが求められるにしても、大手Linuxが幅を利かせるだろう。
もしかするとメインフレーム系のUnixも多少は発展するかもだが、大手のLinuxから乗り換えるメリットがほとんどない。
インターフェース(Ethernet, SATAなど)
ここもまた問題かもしれない。こういったチップはASMediaやRealteckが主流で、国内の生産メーカーを聞いたことがない。
ルネサスエレクトロニクスがUSB3.0のチップなんかは作っていたので、時間をかければ新規開発はできるとは思うのだが…。
ひとまずは新しくPCを新造しようにも、ネックになるかもしれない。
時系列予測
日本時空移転後~1年
ひたすら中古品の基盤を使いまわしたPC・サーバーが流通する。ストレージやメモリに関しては新造されて増設、交換され、多少のスペックアップは見込めるが、CPU、GPUは性能は低下する。
とはいえ、マイニングで大量に流通したGPUによって以外にGPUが不足しない。
日本時空移転後~3年
ARM系CPUを搭載した新造機が多数出回る。
サーバーはARMやSPARC系が少しずつシェアを伸ばす。さすがにWindowsからLinuxへの乗り換えが始まる。
日本時空移転後~10年
ARMが天下を取る。
どうにか国産GPUが既存のGPUの一部を置き換え可能になる。
どうにか国産インターフェース系チップが出そろい、ストレージやインタフェース多数搭載のPCも新造可能になる。
Windowsが次第に姿を消し、Ubuntu、CentOS、Vinelinux、メインフレーム系Unix、Konalinuxあたりに集約される。
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